僕らの背骨
この命が生まれ、やがて死にゆく全ての理由であるその"背骨"を、そう…、その名の真実を、今日この日から真理と共有する…。
莉奈…、
お前では意味がないんだ…。
その"共有"は何よりも繊細で、壊れやすい…。
伝えるべき人間が伝え、
知るべき人間が知る。
その必須のバランスを失えば、きっと真理は今後の人生を憎しみと孤独に支配される…。
誠二が店へ一歩を踏み出した時、真理と同じ制服を着た女子生徒が店内へ入って行った。
友達か…。
恐らくさっきのメールの相手だろう…。
やはり真理が一人の時でなくては…。
少し興ざめした様子の誠二は、踏み出した一歩を元の位置に戻し、視線だけをそのままに機会を伺った。
都会の街は無数の光りで彩られ、雑踏の粒がそれぞれの欲望で光りの影になると、その時間毎に街はまた大きく華やぎ、栄えた地を代々受け継ぐ。
その光りを飾る時代のヒット曲が街中に流れても、それは誠二に届く事なく虚い、やがてはそれも受け継ぐ景色の同伴になり、擦れた粒はその光りに引き込まれる。
誠二が眺めるその光と影は、いつでも誠二の羨望であり、また遠くに見える星屑なのだ。
決して触れる事のない光りをその手に…、理想としたその影をこの胸にして…。
30分程すると真理が手ぶらでビルから出て来た。
誠二が尾行するまでもなく真理は近くのコンビニに入ると、何やら飲み物を物色していた。
外からその様子を見ながら、誠二はこの機を見定めていた。
今なのか…?
この瞬間こそが、
二人の初対面なのか…。
誠二は何故か覚悟を決めぬままゆっくりと入口に近づき、ペットボトルを手にレジに向かう真理を目で追った。
真理…。
どうか俺を怖がらないでくれ…。
君はまだ一つの欠けらで、何も知らないだけなんだ…。
どうか俺を…、
怖がらないでくれ…。
気付くと誠二は店内にいて、入口の前に立ちすくんでいた。
会計を終えた真理がそんな不審な誠二と目を合わせると、真理は同じようにその場に立ちすくみ、ただ誠二を見つめていた。
「………。」
誠二は無言のまま…、
というより何も考えぬまま真理に近づくと、レジの前まで来て急に視線を逸らした。