僕らの背骨

その寂しさは莉奈の心を締め付け、孤独なる時間はこんなにも長く感じる物なのだと知った。

「…すいません。」
四十代前後のその男性は莉奈にそう言いながら鍵穴に鍵を差し込もうとした。


「ちょっと待って!!」
莉奈は叫んだ。

今まで押し殺していた感情の起伏を吐き出すように、莉奈はインターフォンを凝視しながら誠二の応答を待った。

まだ鳴り響くコール音は、そんな莉奈を非情にも辱め、次第にその起伏を緩やかにしていった。

やがて絶望が感情を包むと、莉奈はゆっくりと身を引き、場所を空けた。

すると男性は呼び出しを切り、鍵でオートロックを外すと、莉奈を振り返りもせずそのまま中へと入って行った。


「また明日も来るけん…。莉奈は諦めんよ…。」
莉奈はそう呟き、マンションを出てゆっくりと歩き出した。


既に辺りは暗くなり、見知らぬ都会の夜景が莉奈を迎えた。

季節的には過ごしやすい気温ではあったが、莉奈は寂しさのあまり肌寒さを感じていた。

何処へ行く訳でもなく莉奈は大通りを歩き続け、その都会の電飾を見上げながら、莉奈は莉奈なりにこの旅を楽しいものにしようとした。

ふと目に入ったお洒落なレストランバーを見ると、莉奈は店内で楽しそうに会話をしている大人の女性達を羨ましそうに眺めた…。

誠二の叔父から貰った旅費は充分過ぎる程の額で、このレストランで莉奈が飲食をしても、特に金銭的には問題はなかった。

「中学生なんかが入れるんかな…。」
莉奈はそんな独り言を呟いた。

店先に置かれたメニューを見ても、一見してただのレストランであり、年齢の入場規制が設けられている感じはなかった。

もし断られたら…。

それを想像すると莉奈は顔をしかめたが、『金はあるけん…。』という事実が莉奈を後押しした。

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
都会らしい綺麗な顔立ちの男性店員は、莉奈を断るどころか成人女性と同じ扱いで莉奈を接客した。

「…はい。…あ、あの、莉奈中学生なんですけど…、大丈夫ですか?」
莉奈は後々追い出される事を恐れ、予め聞いた。

「あっ、大丈夫ですよ。ただお酒類は出せませんけど…。」
店員は優しい口調で言った。

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