僕らの背骨
しばらくして女性店員が奨めた料理が莉奈のテーブルに運ばれた。
ずっと気を張りっぱなしだった莉奈にとって、その料理は身に染みる程美味しかった。
女性店員の計らいで、通常は含まれないシンプルなコーンスープも莉奈を喜ばせた。
結局、莉奈はそのイタリア料理を名前も知らないまま平らげたが、今の莉奈にとって名前などどうでもよかった。
聞いたにしろあんな長い名前は覚えられない…、と莉奈は思っていた。
「美味しかった?」
女性店員はまるで我が子を案ずる親のように優しく聞いた。
「はい!」
莉奈は素直な笑顔を見せながら言った。
「よかったらまた遊びに来てね。…そうだ!莉奈ちゃんいつまで東京にいるの?」
女性店員は聞いた。
「明後日までいます。」
それまでに誠二に会えるだろうか…、と莉奈は考えながら言った。
「明後日か…、よかったら帰る前にもう一度来てよ。お姉さんが特別料理作ってあげるから!」
女性店員は得意げな顔をしながら言った。
「…はぁ、…えっ、本当に来て良いんですか…?」
莉奈はその女性店員の優しさを心から喜び、それが社交辞令だったら…、と考え不安になって言った。
「絶対来て!お姉さん待ってるから。」
優しい笑顔を見せながら女性店員はそう言った。
「はい!ありがとうございます。あの…、何時くらい…?」
莉奈は帰りの新幹線を気にしてそう聞いた。
「何時でも!だってここお姉さんの店だもん。こう見えても"オーナー兼店長"だよ!」
女性店員は自分の顔を指さしながら言った。
「えぇ!!こんなに若いのに…。」
莉奈はてっきりバイトだと思っていて、心底驚きながら言った。
「若くないから!!(笑)さっき倍くらい生きてるって言ったでしょ!?」
まんざらでもない表情で女性店員はそう言った。
「本当に…、見えないです…。二十歳くらいかと思ってた…。」
莉奈は少し盛って言った。
「気〜遣わなくて良いから!?(笑)二十歳に見える訳ないでしょ!!もうおばさんだよ、おばさん!!莉奈ちゃんはそういう所も偉いね!」
気を良くしたその"オーナー兼店長"が莉奈の会計をサービスしたのは言うまでもない…。