僕らの背骨
しばらくすると真理の携帯が鳴った。
−誰もいないし(:。;)…。
ていうか紗耶んち来る?さっきママから電話あって、友達といるなら連れて来いって!−
…紗耶の家。
まだそんなに仲良くもないのに…。
−マジで良いの?
ていうか行く!!今どこ?−
30秒と掛からずに真理はそう返信すると、先程の不安顔は何処へやら、緩んだ表情でまたそのメールの返信を待った。
内容からしてテンポ良くその返信が来るだろうと予想した真理だったが、何故か紗耶からのメールは7、8分という長い経過の後に届いた。
−駅!!改札にいる。
ママに電話してた(-.-;)。−
メールを見た真理はふと安堵の表情を見せた。
真理は自身がいる現在地から改札までの近い距離を考え、そのメールには返信せずに改札に向かった。
都心の駅という事もあって、その駅の改札は複数存在したが、二人が待ち合わせた店が南口側だった事から考えて、真理は南口にある唯一の改札に歩を進めた。
改札口で退屈そうに携帯を見ている紗耶が視界に入ると、真理は表情を晴れやかにしながら手を挙げた。
するとその時、先程の男がその真理の手を掴んだ。
「ちょ、ちょっと…、放して下さい…。」
本来なら強く言うべき状況なのに、真理はあまりの恐怖で押し殺したような小声になった。
とっさに真理は紗耶に目線でこの状況を伝えようとしたが、紗耶は携帯を見ていて真理の様子には気付いていなかった。
「お、大声出しますよ…。」
真理は先程と変わらず震える小声で男に言った。
すると男はゆっくりと手を放し、恐怖に震える真理を悲しげな表情で見つめた。
…何がしたいの?
もはや真理はそれしか考えられなかった。
男はジャケットの内ポケットからメモ帳を取り出すと、そんな真理に伝えたい唯一の言葉を書き、すぐにそれを真理に読ませた。
−ごめん…−
「……えっ?」
瞬間に真理は表情を緩め、男の真意を少しだけでも理解してあげたいと思った。
真理の表情を見てそれが伝わった男は、またメモを書き、それを真理に見せた。