僕らの背骨
しかし何度思い返しても莉奈がそれを理解する事は出来なかった…。
莉奈はそんな回想を幾度も繰り返し、その度に自身の判断は正しい物だったのだと思い込もうとしていた。
ただ、繰り返す毎に積もる莉奈の孤独感は、次第に堪え難い苦痛をも生んでいた。
私は間違っていない…、
おかしいのは誠二の方…。
その自身の葛藤は紛れもなく莉奈の中でネガティブな感情を蓄積していて、孤独という言葉では足りない程、莉奈自身を浸蝕していた。
有名な小説家が書いた一節を引用するなら…、
"孤独は肥った…。"
その言葉が今の莉奈には的確だろう。
やがて美紀は促されるままに部屋に入ると、鼻をすすりながら地べたに座った。
「…大丈夫?」
莉奈は言った。
「…私何でもマサキ君の言う事聞いてたのに…、何が駄目なの…?」
美紀は莉奈に聞いた。
「………。」
もちろんそれを莉奈に答えろと言うのは酷である。
「私だって不満は一杯あったのに全部我慢してたんだよ…。なのにさ…、何で私がフラれるの…?」
美紀は行き場のない心情を莉奈に向けて話していた。
「…なんて言われたの?」
全て漏らさず聞いていた莉奈だったが、敢えてそれを聞く事によって美紀自身に田辺の率直な意図を伝えようと言った。
「…他に、…好きな人がいる…って…。」
美紀は言った。
「そればっかりは、仕方ないよ…。」
莉奈は言った直後に今それを美紀にはっきり言うのは酷だと思ったが、結局いずれは認めるしかないという現実に気付き、言い直す事はしなかった。
「…ごめん、帰る。」
美紀はゆっくり立ち上がりながらそう言った。
「…えっ?」
莉奈は焦った。
今美紀を帰してしまっては、真理への唯一の糸が途切れてしまう。
この場で全てを話してしまおうか…。
莉奈は一瞬そう思った。
しかし、この美紀の精神状況で何を理解させろと言うのか。
美紀は自分を支えるので精一杯だ…。
支える…?
莉奈は教科書を片付けている美紀の肩に触れた。