僕らの背骨

莉奈がニュース等で知る痴漢報道が過大されて莉奈に伝わっていたのなら世界は平和だが、悲しい事にあれは紛れも無い真実なのだ。

関東に限らず成人女性に聞く痴漢をされた経験…、その質問の答えは九割以上に偏っている…。

それが有りか無しかの九割かは説明する必要はないだろう…。


莉奈はその痴漢らしき男を警戒しながらも、美紀の監視は怠らなかった。

特に電車が止まる間際は細心の注意を払っていた。

美紀がどの駅で下車するのかが分からない以上、降りる気配で察知するしか方法がなかったのだ。

もし莉奈がいるドアとは逆側のドアが開く駅で美紀が下車したら…。

この混雑ではスムーズに逆側まで行く事が出来ず、莉奈が降りる前にドアが閉まってしまうかもしれない。

だからこそ、莉奈は携帯でメールを打っている美紀をこれでもかというくらいに見つめていた。

数十分程すると美紀は携帯をしまい、ドアに近寄った。

予想以上に美紀が分かりやすくそれを表現してくれた事で、莉奈は安心した様子で降りる意識をした。

都合良く莉奈側のドアが開き、莉奈は美紀が降りるのを確認してからその電車を降りた。

しかし、ホームにある階段は美紀がいた車両より莉奈がいた車両の近くにあり、美紀は莉奈がいる方角へ向かって来た。

慌てて莉奈は車内に戻ると、後ろを向いて美紀が通り過ぎるのを待った。

美紀がまた携帯を取り出しながら莉奈の後ろを通り過ぎるのを確認すると、莉奈はようやく電車を降りた。

莉奈に気付いた様子のない美紀の後ろ姿はどこか楽しそうな雰囲気があり、やはり田辺と別れた事で、これからは自由に親友と会えるという事実が嬉しいのだろうか…、と莉奈は予想した。

こういった所にも、男女の違うがあるのだろう。

もちろん男も友情に厚い部分はあるが、求愛の対象以上に友を優先するという事は小数だろう。

しかし、彼女を自分を飾る道具のように捉えている男の場合は例外である。

そういった男は女性を選ぶ基準すらも友人にひけらかす為と意識している事も多く、利害のそぐわない感情を優先したりはしないのだ。

美人を選ぶのは友人にその写メを自慢する為、キャバ嬢と付き合うのは征服したという満足の為…。

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