僕らの背骨
それが、"母性"という本能を持たない男という生物なのだ…。
逆に女性は求愛の対象から自らの自尊心を満たす事はしない。
むしろ"少ない"と言った方が的確だろう。
満たされたい心の部分は飽くまで安心であり、包容による安堵なのだ。
ルックスの良い男性のみをその対象基準に位置付ける女性がいるのなら、それはまさしく自尊心の為だが、女性でその基準を持つ人間は少ない。
これも統計的な推論になるが、女性は女性に多い感性、男性は男性に多い感性という物がある。
その統計で考えれば、友情を優先する性別は間違いなく女性だろう。
女性は友人同士で培える理解度が男性よりも遥かに高い。
男性は友人同士で心情を正直に話す事が少なく、どうしても自らを強く見せようと話しを捩曲げてしまう。
しかし女性は自らを良く見せる事よりも、傷ついた…、もしくは喜ぶなどの自らの心理状況を相手に理解して欲しいと願う。
もちろん女性は求愛の対象にもそれを望むが、性別の違いは悲しくも大きく感覚に相違をもたらしていて、女性の心理を理解出来る男性は数少ない。
というより、女性の気持ちを男性に深く理解させるというのは不可能にも近いだろう。
肉体的な相違で表される感情の起伏は飽くまでその性別各々にしか持ち得ない物であり、逆もまた然りなのだ。
生理の苦しみを男性が理解出来ないように、女性の心理的な苦しみも男性に望むべきではないのだ。
つまり女性はその同性の友人同士でしか苦しみを共有出来ない事から、男性よりも友情を重んじる傾向があるのだ。
こうして携帯を片手に嬉しそうに改札を通り過ぎていた美紀も、まさしくそんな女性の一人である…。
莉奈は焦りながら精算機に切符を差し込むと、美紀を確認しながら精算を済ませ、改札を抜けた。
駅を出ると莉奈は少し肌寒さを感じ、腕をさすりながら美紀の後を尾けていた。
もし美紀が自宅に帰ってしまったら…、莉奈の脳裏にふとそんな予想が過ぎった。
しかし同じ女性として美紀の心情を察するなら、間違いなく親友に会いたいはずだ…。
莉奈はそんな自信を持って望む事の成り行きを願った。
しばらく歩いていると美紀は閑静な住宅街へと進んで行った。