光を背負う、僕ら。―第1楽章―
未だに長々と熱心に話すお母さんに対して、あたしの返事はどれも気力のないものだった。




どうせいつも、こうなんだ……。




そう思っていると、ふと視線はリビングの端へと動いた。



リビングの端自体ではない。



見ているのはそこにあるグランドピアノだ。



学校のよりは少し古い感じはするけど、綺麗なピアノだ。



あれは、お母さんがピアニストだった時に使っていたピアノ。



お母さんは家でもよくあれで練習をしていた。



あたしもお母さんに教わって、弾いたことがある。



だけどそれも、お母さんが引退するまでの話だ。



お母さんは引退すると決めてから、一斉ピアノを弾いていない。



ピアノを以前のように弾けないのが悲しくて、悔しかったのかもしれない。



プライドだって、傷ついていたはずだ。



そんなお母さんは、あたしにピアノを教えてくれることもなくなった。



お母さんに内緒でこっそりと弾いたことがあるけれど、それもすぐに見つかり言われた。




『ピアノの音は聞きたくないの、お願いだから弾かないで』って。




幼いながらに、嫌だった。



小さな心に感じたのは、とげが刺さったような痛みだった。




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