光を背負う、僕ら。―第1楽章―
そう感じたのは大好きだったから。



あたしがピアノを大好きだったからだ。



弾ければ弾けるほど楽しくて、練習した。



お母さんとピアノを弾くことも好きだった。



それに何より、ピアノを弾くお母さんが好きだった。



舞台の上でライト浴びるお母さん。



ライトがなくても、あたしにはお母さんが輝いて見えたんだ。



それがもう見れない。



大好きなピアノが弾けない――…。




幼い心にその現実は辛かった。



だけどお母さんにそのことを言ったことはない。



お母さんが悲しむし、それに約束したから……。







「ねぇ、お母さん。」




頭で考えるより前に、口が動いた。



ピアノを見ていたら、どうしても話したくなった。




「何?」



と言うお母さんは頭を上げずにボールペンを動かしている。



まだ書き込んでいるらしい。




「お母さん、戸沢香澄さんって知ってる?お母さんのライバル的存在だったピアニストなんだけど。」




その言葉で、お母さんの手が止まる。



そして眉毛をピクリと動かせてあたしの方に顔を向けた。




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