光を背負う、僕ら。―第1楽章―
お母さんはジッとあたしを見る。



だけどすぐにプリントに視線を戻した。




「…知ってるわよ。似たような年代だし。」


「そう…なんだ。」



「それがどうしたの?」



「あっ、えっと…。同じ吹奏楽部に小春ちゃんって子いるでしょ?小春ちゃんって、戸沢香澄さんの娘なんだって。」



「小春ちゃん…?」




お母さんは視線を宙に泳がせたあと言った。




「どんな子?お母さんわからないわ。授業参観も行ってないから。小学校は同じだった?」



「髪の毛が短い子で、あたしよりちょっと背が高い子だよ。小学校は一緒じゃなかった。」



「小学校が一緒じゃないならわからないわ。小学校が一緒だとわかるけど。」




気のせいだろうか。



お母さんの口調が早口になっている気がする。



戸沢香澄さんの名前を出してから。




「…今日ね、小春ちゃんのピアノの演奏聞いたよ。」




またお母さんの眉毛がピクリと動いた。




「………。」




お母さんは何も言わない。




「すごく、上手かった。」



「………そりゃあ、戸沢さんの娘だもの。ピアニストの娘なら上手いに決まってるわ。」




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