光を背負う、僕ら。―第1楽章―
行きたいと思わなくても、高校には行ける。



だけどあたしの場合、そこに夢がない。



目標があるわけでもないんだ。



きっと普通の人なら、夢や目標を実現するために高校を選ぶだろう。



だけど、あたしの場合は違う。



決められた道をただ歩く、…それだけなんだ。



本当にこれがあたしの進むべき道なのかもわからない。



きっと夢や目標があれば、胸を張って行きたい高校を両親に言うだろう。



だけど、夢はなくなった。



あの、8年前に――。




幼い頃、ピアニストになりたいと思った。



ピアノが好きでお母さんに憧れていたから、そう強く思った。



だけどその夢も、絶たれた。



自分の意志なんて関係なしに。



もう、夢なんて見つからない……。





あたしはベッドから立ち上がった。



勉強机に近付き、さっきワークを取り出した本立てから、一冊のノートを取り出した。



授業で使っているノートと同じ種類の大学ノート。



だけど表紙に、教科名や名前が書かれているわけでもない。



ノートを持ったまま、さっきと同じようにベッドに腰かけた。




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