光を背負う、僕ら。―第1楽章―
あたしはズキズキと胸が痛む中、黙々とプリントを配り続ける。



だけどその際、どうしても二人の会話が耳に入ってきてしまう。




「伸一、今日、部活ある?」



「ん?ないぜ。小春はあるのか?」



「うん。コンクールが近いから、急遽部活することになったの。だから今日は、先に帰っててくれる?」



「えっ、別にそれぐらい待ってるけど?」



「でも、すぐに部活終わらないよ?待ってもらうなんて悪いよ。」



「そんなの全然いいって。そこらへんで仁川らと時間つぶすしさ。」



「…そう?じゃあ、…待っててくれる?」



「おぅ、待ってるよ。」




そう言った二人は、とても微笑ましく見えた。



その姿を見ていたあたしは、思わず立ち止まってしまう。



だけど、すぐにプリントを配るのを再開した。




心の中で、自分は敵わない、そう思いながら…。








「ただいまー。」



あたしはいつも通りそう言いながら、家の中に入った。



いつものように1階でするべきことを済ませてから、自分の部屋に向かう。





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