光を背負う、僕ら。―第1楽章―
どうやら、何を作るということはまだ考えていなかったらしい。



伸一君は「うーん…」と、眉間にしわを寄せる。



けどすぐに、何かをひらめいたような、達成感溢れる表情になった。




「全員の呼び名を、下の名前で呼び捨てにしないか?」



「呼び捨て…?」



「そう、呼び捨て。せっかく運命仲間なんだし、ちょっとでも仲良くしたいって俺は思ってる。そのためにはまず、呼び名だと思うんだ。」




呼び捨て…。



頭の中で、考える。



呼び捨てってことは、伸一君や達也君や真奈ちゃんのことを、“伸一”や“達也”や“真奈”って呼ぶことになる。



頭の中で名前を呼んでみただけなのに、一瞬くすぐったいような感じがした。



達也君や真奈ちゃんのことを呼び捨てにすることは、対して抵抗など感じない。



だけど伸一君の名前は、好きな人の名前。



どこか、気恥ずかしいものを感じる。



だからと言って、「呼び捨てで呼ぶのは嫌」なんてことも言えない。




あたしは交錯する微妙な気持ちと葛藤した末、出た答えを口にする。




「…呼び捨てで呼ぶの、いいと思う。」




あたしがそう言うと、伸一君は嬉しそうに笑ってくれた。





< 156 / 546 >

この作品をシェア

pagetop