光を背負う、僕ら。―第1楽章―
伸一君はそんなあたしの気持ちなど知るはずもなく、あたしが差し出したプリントの束を受け取る。
スッ……と手からプリントが離れるとき。
これで伸一君と話せる時間が終わると思うと、さっきまでのときめいていた気持ちが一気にしぼんでいくような気がした。
伸一君はあたしから受け取ったプリントを机の引き出しにしまいこむ。
それを見たあたしは、ゆっくりと伸一君に背中を向けた。
もう、関わる必要がなくなっちゃったもんね…。
もともとあたしは、普段伸一君と話すことなんて全然ない。
伸一君はいつも、みんなの中心的な存在。
明るくて、楽しくて、いつだってみんなに好かれている。
そんな彼と地味なあたしが関わるなんてことは、本当にないんだ…。
あたしは自分の席の所まで戻り、スクールバックに手をかける。
だけどその行動は、彼の声によって止められることになる。
「あのさ、麻木」
突然呼ばれて、心臓が飛び跳ねる。
ドキドキと鳴る鼓動をうるさく感じながらも、伸一君の方に振り向いた。
振り向くと、伸一君は真直ぐあたしを見ていた。
そして振り向いたあたしは、もちろんのごとくそんな伸一君と目が合った。