光を背負う、僕ら。―第1楽章―
名前を呼ばれただけでも、十分ドキドキしていた。
そんな中さらに目が合ったことで、あたしのドキドキはさらに早まった。
ドキドキにドキドキが重なって、心臓がおかしくなりそう……。
そう思っていると、黙っていた伸一君が口を開く。
「今日って、何か宿題あったっけ?」
「えっ…」
あまりにも困ったような顔で聞いてきた伸一君の言葉で、再びドキドキがしぼんでいくのを感じた。
別に何かを期待していたわけじゃない。
けれど、久々に伸一君と話せたという喜びを感じていたあたしには、一切想像していなかったことを聞かれて少しがっかりする気持ちがあったんだ。
けど、ちゃんと返事はしなきゃいけないよね。
「…あったよ?」
「えっ、マジ? 何の教科だっけ?」
「数学。 教科書23ページの問3だよ」
「そうだったっけ? そういえば俺、授業の後半は寝てたな」
「そ…そうなんだ」
おどけたように笑う伸一君に、あたしは苦笑いしか返せなかった。
伸一君は、「数学かー」と一人呟きながら、教室の後ろにあるロッカーに向かう。
そしてガサゴソとロッカーの中をあさり出した。