光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「そこまで言ってもらえるなら、借りようかな。」



「うん、どうぞ。」




あたしが差し出した本を、伸一が受け取る。




「ありがとう、佐奈。」



「どういたしまして。」





なんだかとても、不思議な気分だった。



ほんの少し前までは、伸一への恋心を忘れようって思ってた。



だけど今は、違う。



あたしが手渡した本を持って笑顔になる伸一を見ていたら、そんな考えはとっくの昔になくなってしまった。



たったこれだけの短時間で気持ちが変わってしまうなんて……。



あたしには、伸一への想いを諦めることが出来ないのかな?





ドキ…ドキ…ドキ…





また気がつけば、ドキドキと鼓動が速くなってきていた。



伸一と話したり、傍にいるだけでドキドキと高鳴るこの鼓動は、きっとあたしの真の心なんだ。




やっぱり、諦めるなんて無理だね…。




自分で決めたことだけど、やっぱりこの考えだけは無理だと、この時あたしは実感していた。



もう少し、もう少しだけ頑張ってみよう。



まだ、始まったばかりの恋だもん。





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