光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…はぁ」
気がつけばふと漏れる小さなため息。
ため息をついた直後、頭に不安がよぎった。
今のため息、伸一君に聞こえてなかったよね?
幸い聞こえていなかったらしく、伸一君は相変わらずロッカーの中をあさっていた。
よかった…。
伸一君に気付かれなかったことに、あたしはホッと胸を撫で下ろした。
一人でため息ついてるなんて、何かあるって思われちゃうもんね。
「おっ、あったあった」
伸一君がいきなり発した声で、あたしは少し驚いてしまった。
伸一君を見ると、手に数学の教科書を持っていた。
どうやらさっきまで、それを探していたらしい。
♪♪~♪~♪♪♪~♪
……とその時。
どこからともなく音楽が聞こえてきた。
様々な楽器が奏でるハーモニー。
聞こえてきたのは、まぎれもなく吹奏楽部の演奏だった。
…部活に行かなくちゃ。
とっさにそう思い、スクールバックに手をかけた。
だがそれも、またしても彼によって遮られることになる。