光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ただあたしの耳に届くのは、伸一君の声。
……そう。
君の声だけなの。
「じゃあ、すぐに行くから!」
伸一君は仁川君に向かってそう言うと、自分の傍の窓を閉めた。
スー…トンッ
窓を閉める時に窓枠同士がぶつかる音。
その音で、我に返った。
それと同時に、あらゆる音が耳に入ってきた。
完全に自分の世界に入ってた…。
そう思うのと同時ぐらいに、他の窓を閉めようと動いた伸一君と目が合った。
「…あれ? 麻木、まだいたのか?」
伸一君の言葉を聞いた途端、頭の中に『しまった』という思いが駆け巡った。
「あっ、うん…」
引きつった表情で、ぎこちない返事をする。
しかも返事をする間は、机の引き出しから物を取り出す振りをしていた。
教科書やノートなんて、とっくにスクールバックの中に閉まってあるのにね……。
「あっ、そうだ。 悪いけどそっちの窓閉めてくれね? 俺らで最後だから、教室の戸締まりしないといけねーし」
「うん、わかった」
すかさず振りを止めて、伸一君が閉めている窓とは反対方向に位置している窓を閉めにいった。