光を背負う、僕ら。―第1楽章―



スー…トンッ




窓を閉める音が、やけに鮮明に聞こえてくる。



少しでも長く伸一君と一緒にいたいという思いから、窓を閉めるスピードがやけにゆっくりになってしまう。



それに引き替え伸一君は、やけに素早く窓を閉めていた。



さっき同じ部活の仁川君と話していたということは、話の内容はきっと、「早く来い」というようなことだったのだろう。



だからやけに、窓を閉めるスピードが早いんだ。



そう思っている間に、伸一君は教室にある窓の半分以上を閉め終わっていた。



残りの窓は、あたしがついさっき閉め終わったところだ。



伸一君はすべての窓を閉めたことを確認すると、自分の机の上に置いてあったスクールバックに手をかける。



だいぶ急いでるみたい…。



それは伸一君の素振りから十分分かることだった。



その時、フッとあたしの中にある考えが浮かんできた。



「あっ、あの…」



自分でも気付かないうちに声が出ていた。



伸一君は「ん?」と言うような表情であたしに視線を向ける。



一呼吸を置いてから、言おうと思って頭の中に並べた言葉を、そのまま読むようにして口を開いた。



< 22 / 546 >

この作品をシェア

pagetop