光を背負う、僕ら。―第１楽章―
たった一つ変わっただけで、近付いたと思ったら離れる距離。




伸一のことを『佐藤君』と呼ぶようになってから、あたしはほとんど伸一と会話をすることがなくなった。



それはもちろん、中学生になってからの男女関係が原因。



だから今は伸一と関わることが本当にない。




だからこの前話せた時は、嬉しかったな…。



すごく、ドキドキしたけど…。





あたしはついこの間の伸一との会話を思い出す。



ほんの少し。


たったちょっとの会話だけど、久しぶりに話せて嬉しかった。




あの後、少し落ち込むこともあったけど…。




幸せなピンク色の記憶の中に急遽現われた、もやもやした灰色の記憶。



脳裏にやけにあの時の伸一と小春ちゃんの姿が浮かんできて、あたしはその姿をかき消すようにぶんぶんと勢いよく頭を左右に振った。




「頭振りすぎた～…。」




二人の姿をかき消すことは出来た。



だけどあまりにも勢いよく頭を振りすぎたせいで、頭がクラクラする。




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