光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…いっ、急いでるみたいだから、あたしが鍵を閉めておくよ?」
あたしにとっては、これだけのことを言うだけでもなんだか精一杯だった。
だって伸一君、真直ぐあたしの瞳を見てくるんだもん。
ただでさえ人見知りであるあたしは、人の顔を真直ぐ見ながら話すのが苦手でもあった。
ましてやそれが好きな人の場合だと、余計に。
そうだというのに、伸一君はあたしの顔……というか瞳を見てくる。
言う前は、可愛い子みたいに微笑みながら言ってみようかな、と思ったりもした。
けれど、実際はそう簡単にはいかない。
微笑むどころか、むしろ顔は引きつっていただろう。
言葉は噛むし、おまけに緊張して声は小さい。
ほんと……言うだけで精一杯な状態だった。
恥ずかしさと悔しさみたいな感情が心の中で入り乱れていた。
あたしはただ、うつむくということしかできない。
そんなあたしに伸一君は、少し驚いたみたいに声のトーンを上げて言う。
「えっ…。 でも悪いだろ? 鍵は職員室に持っていかないといけねーし…」
職員室とあたし達三年生の昇降口は、正反対な場所に位置している。