光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「悩みなんて、ないよ。ただ最近暑いでしょう?だから夏バテっぽくなってるだけ。だから、心配してくれなくても大丈夫だよ。」




あたしの笑った顔を見たせいか、流歌の顔が真剣なものから安堵したものに変わった。




「そっか、ならいいの。でも夏バテでしょ?あんま無理しないほうがいいよ。」



「うん、そうする。ありがとう。」




流歌は最後にちょっとだけ笑ってみせると、明日美の方に歩いていった。




あたしはその背中に、「ごめんね」と心の中で呟いた。




それからまた、外を眺めた。



その瞬間、作り笑いが崩れていく。




…よかった、流歌にバレなくて。




そう思いながら、安堵のため息をついた。



流歌には言えない。


もちろん、明日美にも。



だって二人には、あたしの夢のことを言えていない。



だからこそ、進路のことで悩んでいることも言えなかった。





どうしたらいいんだろ……。





お母さんにも自分の進路について言えない。



流歌と明日美にも悩んでいることを言えない。




誰にも言えないこの気持ちを、あたしはどうすればいいんだろう…。




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