光を背負う、僕ら。―第1楽章―
あたしがお母さんにピアノを習っていたのは、小学一年生のあの時まで。



それから今日まであたしは、誰かにピアノを習ったりしていない。



それどころかピアノ自体にも、ついこの間みんなの前で弾くまで触れていなかった。



趣味の作曲だって、ハミングだけでしているぐらいだ。



ピアノの習うどころか、触れることもままならない。




そんなあたしに、才能なんてあるわけない…。





「あたしに、才能なんてない。」



「えっ…。」



「佐奈ちゃん今、そう思ってたでしょう?そんな顔してるもの。」



「………。」




何とも言えない。



だって、事実なのだから。




「…佐奈ちゃん、そんな自信のない顔をしないで。佐奈ちゃんは十分、ピアノの才能があるんだから。」



「…でも先生。あたし、本当に才能なんてないです。小春ちゃんみたいに上手くないし…。第一、ピアノ自体誰にも習ってないですから。」



「習ってないって、前にピアノを弾いてた時にも言ってたよね?それ、本当に…?」




…なんだろう。



鈴木先生は、あたしが隠していることすべてを見透かしてきそうな勢いがある。




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