光を背負う、僕ら。―第1楽章―
むやみに口を開いてしまえば、一気に先生のスペースに巻き込まれてしまいそうで…。



あたしは慎重に言葉を選ぶ。




「本当に、習ったこともないです。」




はっきりと、そう言った。



秘密にしていることがバレないように、堂々と。




さすがの先生も、それ以上は聞いてこなかった。



ただ少しだけ残念そうな表情で言った。




「これからピアノを習いたいとか、ピアノについて勉強したいとかは思わない?」



「それは…。」




自然と言葉が詰まってしまう。




本当に……どうして。


どうして先生はさっきから、あたしが答えにくいことばかり聞いてくるの?



まるであたしの本音を、引き出そうとするみたいに…。




だけど、あたしの本音は言っちゃいけない。



…言っちゃいけないの。



だってあたしの抱いた夢も進路も、認めてもらえないんだから……。





「ねぇ、佐奈ちゃん。一度考えてみてくれない?ピアノのことを勉強していくことを。」




どう先生に答えようかと視線を床に落としていたあたしだけど、先生の言葉で勢いよく顔をあげた。




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