光を背負う、僕ら。―第1楽章―
先生の表情は、とても必死に見えた。




ピアノの勉強をすること。



それはさっき先生に東條学園の話を聞いた時、とても興味がわいた。



自ら東條学園に行ってみたいと、思えるほどに。



だから先生に東條学園を勧められた時、本当はすごく…すごく嬉しかった。



だけどあたしはもう、ピアノは……。




何も答えないあたしに、先生は次々に話していく。



まるであたしの心を、本心を、つき動かすかのように。




「こんなことまで佐奈ちゃんに言うのはね、東條学園のことを勧めた理由に関係してるの。理由は佐奈ちゃんにピアノの才能を感じたから。…ううん、それだけじゃない。佐奈ちゃんのピアノの演奏が、本当に笹川さんと同じ雰囲気を持っていたからよ。」




お母さんと……同じ雰囲気がする。



その事実によって、あたしは気付かされる。



それはあたしが、お母さんのピアノの雰囲気を覚えていたということなの?



お母さんと一緒にピアノを弾いていたのは、もう何年も前になってしまった。



なのにあたしは、体でお母さんのピアノを覚えている。



大好きだった、お母さんのピアノを。




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