光を背負う、僕ら。―第1楽章―
伸一君は教室の出入り口に向かう。
あたしも、伸一君が向かった方とは違う方の出入り口に向かった。
そして教室を出ると、ドアを閉めて鍵を閉める。
思ったより鍵穴に鍵をさすのに苦労してしまった。
だけどガチャガチャとやっているうちに、ガチャン……と音をたてて鍵がしまった。
そしてもう一つのドアの鍵を閉めようと顔を向ける。
するとそこには、先に帰ったはずの伸一君の姿があった。
「あれ…? 部活に行ったんじゃないの?」
さっきの伸一君の言葉からして、てっきりすぐに運動場に向かったものだと思っていたあたしの口から、そんな言葉が出ていた。
すると伸一君は、壁に片手をつけながら答えた。
「麻木が鍵返しに行ってくれるのに、俺が何もしないのは悪いだろ? だからせめて、鍵ぐらい閉めるのは手伝おうと思って」
伸一君はそう言うけれど、だったらさっき、なんであたしに鍵を渡したんだろう…。
どうせなら、二つのドアを閉めてから鍵を渡してくれたらいいのに。
そう思いつつも、心の中は温かい気持ちでいっぱいになっていた。
少しのことにも気を使ってくれた、伸一君の優しい気持ちで。