光を背負う、僕ら。―第１楽章―
「どうしたの？佐奈ちゃん。そんなに急いで。」




鈴木先生はもともとぱっちりしている大きな目をさらに大きくさせて、自分の元へやってきたあたしを見上げた。



再度あたしは深呼吸をして、ずっと手に持っていたパンフレットを広げた。




「…先生に、聞きたいことがあるんです。」



「聞きたいこと？」




先生はあたしとあたしが持つパンフレットを、不思議そうに交互に見る。



あたしは震える指先で、さっき見つけた名前を指差す。



パンフレットの指差した場所が、ちょうど先生に見えるようにしながら。




「さ…笹川詩織さんって、東條学園の卒業生なんですか？」




指だけじゃなくて、声も震えた。



それぐらい、答えを知るのに緊張していた。



むしろ事実を知ることに恐怖さえ感じて、先生の顔を直視出来ない。




出来ることなら、違うと言ってほしい。



パンフレットにある名前は、間違いなんだと。



だってこの事実が本当ならば、お母さんはずっとあたしに嘘をついていたことになる。



だからこそ、信じたくなかった。



自分の目で見た名前は事実ではないと、言い聞かせてしまうほどに。




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