光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ドクン…ドクン……




家の玄関の前まで来た時、鼓動のスピードは人生の中でも一番と言えるほどの早さになっていた。



走ってきたからじゃない。



きっと、緊張しているから。



自ら走ってまでここに来たというのに、心の準備はまだ出来ていない。



でも、今さら引き返すことなんて出来ない。




……頑張れ、あたし。



ちゃんと理由を聞くって、決めたじゃない。



今さら怖じ気づいて、どうするのよ。




必死に、自分に言い聞かせた。



頑張れ、頑張れ、と何度も自分にエールを送りながら。




そしてあたしは深呼吸を一回してから、ついにインターホンをプッシュした。





ピンポーン…




外まで聞こえてくる、チャイムの音。



その音が聞こえた直後、中から足音が近付いてくる。



次第に足音は大きくなり、鍵を開けた音がしたかと思うと、重い玄関の扉がゆっくりと開いた。





「おかえり。」




中から出てきたのは、いつもと変わらない笑顔であたしを出迎えてくれるお母さんだった。




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