光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「麻木、こっちに鍵投げて」



言われた通り、伸一君の方に向かって鍵を投げた。



弧を描いて飛んでいった鍵は、見事に伸一君の手の中に収まった。



鍵を受け取った伸一君は、サッと鍵を閉めた。



手間取っていたあたしとは大違い。



「今度は麻木が受け取れよ?」



伸一君は、あたしの方に向かって鍵を投げた。



「えっ…、えっ?」



突然「受け取れ」と言われて慌てふためいていたあたし。



だけど、なんとか鍵をキャッチすることができた。



「じゃあ、あとは頼むな」


「…うん」



伸一君はあたしの返事を聞くと、あたしに背中を向けて歩いて行った。



その背中が見えない所に行くまで、ずっと見つめていた。



伸一君の姿が見えなくなると、なんだか胸に寂しいような気持ちが残ったけど、あたしは伸一君が歩いて行った方とは逆の方に歩き出した。



歩く途中、ふと自分の頬に手を当てる。



すると触れた手から、微熱が伝わってきた。



顔…火照ってる。



そう思うと、さらに顔が熱くなったように感じられる。



< 26 / 546 >

この作品をシェア

pagetop