光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「麻木、こっちに鍵投げて」
言われた通り、伸一君の方に向かって鍵を投げた。
弧を描いて飛んでいった鍵は、見事に伸一君の手の中に収まった。
鍵を受け取った伸一君は、サッと鍵を閉めた。
手間取っていたあたしとは大違い。
「今度は麻木が受け取れよ?」
伸一君は、あたしの方に向かって鍵を投げた。
「えっ…、えっ?」
突然「受け取れ」と言われて慌てふためいていたあたし。
だけど、なんとか鍵をキャッチすることができた。
「じゃあ、あとは頼むな」
「…うん」
伸一君はあたしの返事を聞くと、あたしに背中を向けて歩いて行った。
その背中が見えない所に行くまで、ずっと見つめていた。
伸一君の姿が見えなくなると、なんだか胸に寂しいような気持ちが残ったけど、あたしは伸一君が歩いて行った方とは逆の方に歩き出した。
歩く途中、ふと自分の頬に手を当てる。
すると触れた手から、微熱が伝わってきた。
顔…火照ってる。
そう思うと、さらに顔が熱くなったように感じられる。