光を背負う、僕ら。―第1楽章―
着替えを済ませ、東條学園のパンフレットを持って部屋を出た。



一緒に覚悟も勇気も、胸の中に持って。





リビングに入ると、お母さんは先にソファーに座っていた。



あたしはお母さんの座っている向かい側のソファーに、そっと腰掛けた。



持っていたパンフレットは、体の後ろに隠す。




まだ、見せない。


最後の確認が済むまでは。




「大事な話って、何なの?進路の話?」




先に口を開いたのはお母さんだった。



しかも表情や口調は進路の話をする、“大人”の方のお母さんだ。




「お母さんって、爽守高校の卒業生なんだよね?」




お母さんの質問には答えず、逆に尋ね返した。




ねぇ、お母さん。



これが最後の確認だよ。



ちゃんと事実を言って。



そうしたらあたし、きっと気分が晴れるから。




だけどやっぱり、人生はそう上手くはいかない。



人生は何かにぶつかって、それを乗り越えて、やっと前に進めるもの。



あたしは今、それにぶつかってしまったのだ。




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