光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「矢田先生」
先生の名前を呼びながら、先生のもとに近寄る。
「麻木さん、どうしました?」
先生は仕事をしていた手を止めて、あたしの方に体を向けた。
「授業中に提出できなかったプリントを持ってきました」
「おお、そうか。 ご苦労様」
先生はあたしが差し出したプリントを受け取る。
あたしはプリントを渡した後、近くにあった鍵置き場に鍵を置いた。
「じゃあ、さようなら」
まだ帰るわけじゃないけれど、一応そう挨拶をして歩き出した。
「失礼しました」
職員室を後にして廊下に出た。
張り詰めた空気が漂う職員室とは違って、廊下はどこかあたしを落ち着かせる雰囲気があった。
歩み出すと、目の前に校長先生が立っていた。
こちらもまた眼鏡をかけていて、小柄な校長先生だ。
目が合うと、
「こんにちは」
と声をかけられた。
「あっ、こんにちは」
そう返事を返すと、校長先生は廊下の窓から運動場を覗く。
たくさんの人が、元気に駆け回っている運動場。
校長先生はそれを、嬉しそうに眺めていた。