光を背負う、僕ら。―第1楽章―
少なからずあたしは、そう思える程度になっていた。



だけど真実を受け入れられたかどうかということに気付いただけで、この話のすべてが終わったわけじゃない。



東條学園でのこと。



お母さんがピアニストになってからのこと。



それらのお母さんの過去を聞くことは出来た。



だけどまだ、大事なことを忘れてる。



あたしが一番疑問に思って、知りたかったこと。




どうしてお母さんは今まで、東條学園の卒業生であることを隠していたの?



それもわざわざ、嘘までついて……。




それを聞くまで、あたしはお母さんと真正面から向き合わなければいけない。




あたしは再度覚悟を決めて、唾を飲んだ。




「お母さん。辛い過去も全部話してくれてありがとう。だけど……一つ聞いてもいい?」




あたしの言葉を聞いたお母さんは、瞼を伏せて首を縦に振る。



ゆっくりかつ慎重だったお母さんの様子からして、多分お母さんは気付いてるんだと思う。



あたしが今から聞こうとしていることを。





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