光を背負う、僕ら。―第1楽章―



あたしはふと、耳を澄ました。



さっきまで聞こえていた演奏が止まっている。



次の練習の準備でもしてるのかな。



そう思いながら、3階の廊下を歩いて音楽室へと向かう。



音楽室の前に着くと、ドアについている小窓から中の様子がはっきりと見えた。



中では、楽器を移動させる人の姿がある。



あっ、今からパート練習みたい。



あたしは音楽室のドアを開いた。



手前に引くと開くタイプのドアから、キィーという甲高い音が鳴る。



その音に中の人達が反応して、こっちに視線が集まった。



「こんにちはー!」



すかさずあたしの姿を見た後輩達が挨拶をしてきた。



「こんにちは」



丁寧に挨拶を返した後、スクールバックを音楽室の端に置いて、さっそく自分の担当の楽器の準備を始めた。



「やけに遅かったね」



楽器の準備をしていると、流歌が声をかけてきた。



「えっ、そうかな?」



と、軽く受け流すあたし。



だけど流歌は、そんなあたしに言う。



「何かいいことでもあった?」


「えっ!?」



あたしが突然あげた声で、音楽室にいるみんながあたし達の方を見る。



< 31 / 546 >

この作品をシェア

pagetop