光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「佐奈がピアノを好きな気持ちは、確かにわかる。だけど好きだから何でも越えられるかは、別なのよ?好きなものだからこそ、ぶつかるものが大きくなる場合だってある。本当にそれでも、越える自信はある?」



「それは…。」




あまりのお母さんの迫力に怖じ気ついてしまい、言葉は詰まって出てこない。




…わかってる。


わかってるよ、お母さんが言ってることの意味は。




お母さんに言わせればそれも、本当にわかっているとは言えないのかもしれない。



たった十数年生きただけの子供のあたしと、社会人となって働いたりもしている大人のお母さんとは、明らかに経験も知識も違うかもしれない。



だけど何かに対する意志の強さに、大人だから、子供だから、という分け方があるのかな?



何かに夢中になって取り組める。



好きなことだから、何度挫けても諦めずに頑張れる。




それは大人も子供も関係なくて、人間が生きていく中で見つけられる、“生き甲斐”とは違うのかな……?




あたしは少なくともピアノのことを、そう思ってる。





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