光を背負う、僕ら。―第1楽章―
だから、あたしは……。




あたしは膝の上に置いていた手で、ぎゅっと握り拳を作った。




「…それでも。それでもあたしは、何だって越えてみせる。あたしはそれぐらいの覚悟、してるよ。」



「………。」




お母さんは黙ったままあたしを見つめて、あたしの話を聞いていた。




「あたし、本気でピアニスト目指したいって思ってる。……だから…その、またピアノ弾いてもいいかな?」




たったこれだけのことを言うだけなのに、すごく声が震えた。



お母さんの顔を見るのが、返事を聞くことが、なんだか怖かった。



あたしが言った言葉は、お母さんとの約束を守りたくないというあたしの意志を表している。



だからこそ、お母さんに何て言われるかと想像すると、少し怖い。



だけど“ピアノを弾きたい”と言ったことを、あたしはちっとも後悔していない。



だってあたしが言ったことに、嘘偽りなんてないのだから。



すべて本音。



いつかはお母さんに、ちゃんと言おう。



何度も何度もそう思って、あたしの中で温め続けてきた本音なのだから。





< 313 / 546 >

この作品をシェア

pagetop