光を背負う、僕ら。―第1楽章―
気が付くとあたしは、ソファーに座っていなかった。



何を思ったのか立ち上がり、そのまま立ち上がった足で歩き出す。




「…ちょっと!佐奈!?」




お母さんが呼び止める声をまるでスタートダッシュの合図にするかのように、あたしは走り出した。



お母さんの声を気にも留めずにリビングを出て、真っ直ぐ2階に向かう。



あたしは勢いよく階段を駈け登り、自分の部屋を目指す。




「佐奈っ!!どこ行くの!?」





背後でお母さんの声がした。



振り向かなくてもわかる。



お母さんがあたしを追いかけて来てるってこと。




そりゃあ、そうだよね。



言いたいことだけ言って、急に走り出したのだから。




だけどあたしはお母さんが追いかけてきていても、止まることはしない。



それどころか逆にスピードを上げて、急いで自分の部屋の中に入った。




――まるで、逃げるかのように。





部屋に入ってすぐに、あたしは部屋の鍵をかけた。



お母さんが部屋に入ってこないように。



願わくは、誰もあたしの夢を邪魔しにこないように。





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