光を背負う、僕ら。―第１楽章―
だから、どうしてもあたしにピアノに関わらせたくないと思うお母さんの気持ちが、悲しくてならなかった。



お母さんがそう思ったり、ピアノに関わらないように行動したのは、すべてあたしのことを思ってしたことだと思う。




だけどね、違うよ。



お母さんは、あたしの本当の気持ちに気付けていないんだよ。



それがすごく……悲しい。




涙は次から次へと溢れるばかりで、気がつけばフローリングの床にポタポタと落ちていた。




悲しみもすべて、涙と一緒にあたしの中から流れさってしまえばいいのに……。




そんな儚き願いは、あたしの涙の水溜まりの中に、静かに姿を消していった。




「……でもね、本当は少しだけ気付いてた。佐奈は今でも、ピアノを好きなんだってこと。」



「えっ……？」





あたしが部屋の中で涙を流していることを知らないであろうと思われるお母さん。



そんなお母さんが続けた言葉は、あまりにも予想外で驚くべきものだった。



思わず涙も、ピタリと止まってしまう。





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