光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「なんとなくよ…。なんとなくだけど、そんな気がした。あなた時々、リビングにあるピアノを、何か思い詰めた表情で見つめていたから。」



「………。」




知らなかった、自分でも。



あたし、そんな風にピアノを見ていたの?



もしかして、今までずっと……?





人って、頭でどれだけ考えて嘘をついてもダメなんだね。



心はいつだって、嘘をつくことなんて出来ない。



そんな誠の心が、あたしに素直な行動をさせているんだ。





自分でも気付かなかったその行動が。



ピアノを弾いた時のあの心の解放感が。




すべてそれを、証明している。





――もう、嘘などつけない。



これ以上自分の気持ちを閉じ込めていたって、きっと何の意味にもならない。



だったらもう、すべてをさらけ出してしまおう。




自分が自分らしく。



最高に輝ける生き方をするために。





あたしは強く一歩を踏み出すように、立ち上がった。



涙はもう、とっくに渇いてしまった。



次にあたしが涙を流すのはきっと……。




――自分の夢を自らの手で手放して、諦めてしまったとき。





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