光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ゆっくりと、背を向けていたドアに向き合う。



そして恐る恐る、ドアの取っ手に手をかける。



このドアの向こうには、お母さんがいる。



そして、あたしがまず乗り越えなければいけない壁が立ち塞がっている。




再度覚悟を決めるために、ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと息を吐いていく。



そうして握った取っ手を動かして、ドアを開いた。





開けたドアの向こうに、果てしない未来が見えた気がした――…。





ドアを開けると、お母さんが少し驚いた表情で立っていた。



どうやらあたしが出て来るとは思っていなかったらしい。




「ねぇ、お母さん。」




真直ぐお母さんの瞳を見据える。



揺らぐことのない、確かな瞳。



あたしの決心は、そんな瞳に現れていた。




「お母さんが言いたいことは、すごくわかるよ。……だけどね、あたしにもこれだけは言わせて。」





もしも人に、


「あなたが一番、人に譲れないものは何?」


と尋ねたら、人は何て答えるのだろう。






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