光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「ななっ、なんで…!」
「シーッ! 大声出すと、みんなに聞こえちゃうよ?」
「あっ、うん…」
パニックになっていたあたしだけど、流歌のおかげでなんとか落ち着くことができた。
「佐奈はね、佐藤君のことになると顔が綻んでるの。 だからすぐに分かるよ」
流歌はそう言いながら、あたしのおでこを人差し指でツンッとつついた。
「そ…そんなに分かるものなの?」
流歌につつかれたおでこを、片方の手でおさえながら流歌に尋ねる。
「少なくとも、あたしにはね」
と言った流歌は、自分の楽器を準備し終わったみたいだ。
流歌は、あたしが伸一君を好きだということを知っている。
もちろん明日美も、そうだ。
…とはいえ、まさかそんなに表情に出ていたなんて。
なんだか少し、ショックかもしれない…。
なんだかんだと考えているうちに、あたしも自分の楽器を準備し終えた。
トントンッ
そんなあたしの肩を、背後から誰かが軽く叩いた。