光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「佐奈……あなた、本気なの?」




お母さんは、悲しみを含んだ瞳であたしを見ていた。




ごめんね、お母さん。



やっぱりあたし、お母さんが言う通りの人生を歩むことなんて出来ないよ。



それがたとえ、どれだけあたしのことを思って、願うことだとしても。




「うん、本気。」



「どうして?さっき、お母さんが言いたいことはわかってるって言ったでしょう?」



「うん、言った。だからこそ、あたしは諦められないの。」



「どうして……。」




お母さんは心底あたしの気持ちを理解出来ないみたいだった。




……そうだよね。



だってあたし、すごく矛盾したこと言ってる。



だけどね、伝えたいのはその矛盾の中に生ずる真実。




「お母さん、自分のようになってほしくなくて、あたしには同じ道を歩んで欲しくないんでしょう?」



「……ええ。」



「だけどあたしは逆にそれを聞いて、同じ道を歩んでみたいって思った。」



「……だけどそれは――。」



「――辛い道だってことは、わかってるよ。」




お母さんが言おうとした言葉を、あたしは先に口に出した。





< 331 / 546 >

この作品をシェア

pagetop