光を背負う、僕ら。―第1楽章―
音楽が言葉の代わりをしてくれる。



そのことをあたしも、少なからず実感していた。



部活でみんなと演奏した後は、なんとなくだけとみんなとの距離が近くなったような気がする。



特に新入生が入ってきた春など、初めて部員のみんなで演奏した時は、それを感じたことがある。



演奏する前と、演奏した後。



たった数分間一緒に演奏するだけでも、そんな違いがある。



それはやっぱり滝川先生が言う通り、音楽が言葉の代わりをしてくれているのかもしれない。



……ううん。


もしかしたらそれ以上に、言葉じゃ伝えられない気持ちなども、音楽は人に伝えてくれるのかもしれない……。




だけどその音楽を演奏するための勇気を出すことは、誰もが難しいと感じている。



その証拠に、再び訪れた沈黙はしばらく流れていた。



そんな沈黙に半ば諦めかけた滝川先生が口を動かそうとした時、その場の空気をガラリと変える動きがあった――。





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