光を背負う、僕ら。―第1楽章―
そして今回も、小春ちゃんは動いた。



誰も手を上げないと思っていた、この状況で。



こういう時にでも行動出来る小春ちゃんが、あたしにはすでに遠い存在に思えた。



有名なピアニストの娘。



その肩書きは、あたしも小春ちゃんも変わらない。



目指すものだって、きっと一緒。



なのにここで動けるか動けないかということが、あたし達の差を表しているみたいで……。



小春ちゃんを尊敬する一方で、自分の力のなさに悔やんだ。




「じゃあ、とりあえずこっちに来てくれる?」



「はい、わかりました。」




救世主とも言える小春ちゃんを、滝川先生は丁寧に誘導する。



その様子を周りの人は、まだ少しざわめきながら見つめている。



あたしはただじっと小春ちゃんを見つめて、滝川先生との会話に耳を傾けていた。





< 360 / 546 >

この作品をシェア

pagetop