光を背負う、僕ら。―第1楽章―
同じ吹奏楽部のみんなも同じことを考えているらしく、明日美と流歌の会話と同じような会話を何度も繰り返している。



その他の人達はその場の空気に溶け込めずに、ただ首をかしげるばかりだった。




「ピアノですね、わかりました。では、こちらに来てください。」



「はい。」




周りの騒がしさなどに目もくれずに、滝川先生はそそくさと小春ちゃんをピアノのもとへ連れていく。



そんな滝川について行く小春ちゃんの表情は、無表情と言ってもおかしくなかった。



周りで自分のことが話されていることは、嫌でも聞こえてくるからわかっているはず。



なのに小春ちゃんは表情一つ崩さずに、冷静さを保ったまま歩いていく。




小春ちゃんは今、どんな心境なのだろう…。




小春ちゃんのあの表情の裏側にある心情を、あたしは知りたくて仕方がなかった。



小春ちゃんは、どんな演奏をするのだろう。



この場に置いてもそんな些細なことを思える一方で、小春ちゃんを心配する気持ちも強くなっていた。



実はさっきからざわめきの中に、小春ちゃんに対して中傷とも言える言葉が紛れ込んでいる。





< 363 / 546 >

この作品をシェア

pagetop