光を背負う、僕ら。―第１楽章―

あたしは目を逸らさずに、じっと小春ちゃんと滝川先生を見ていた。



そうやって見ていると、滝川先生に渡された楽譜に目を通していた小春ちゃんが、ある一枚の楽譜を見て手を止めた。



その楽譜を流すように見た後、小春ちゃんはそれを滝川先生に見せながら言う。




「この曲が弾きたいです。吹奏楽部のみなさんと演奏するなら、これで大丈夫だと思いますし。」



「ちょっと見せてね。」




小春ちゃんが差し出した楽譜を受け取った滝川先生は、小春ちゃんと同じような楽譜を見た。




「うん、この曲なら大丈夫。みんなで演奏するなら、この曲が無難ね。」




頷きながら微笑む滝川先生を見て、小春ちゃんもホッと一息つくように顔を綻ばせる。



そんな小春ちゃんを見て、平気なように見えた彼女も、実は緊張していたことがわかった。



そうだよね。

緊張しない人なんていないよね。



どんなに完璧な人だって、こういう場面では緊張する。



小春ちゃんみたいな完璧な人はきっと緊張することもないと思っていたあたしは、そんな当たり前のことを今になって気付いていた。