光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「じゃあ、さっそくこの曲でやりましょう。はい、あなたの楽譜。」



「あっ、はい。」




一度滝川先生の手に渡った楽譜は、もう一度小春ちゃんのもとへ戻った。




パンパンッ――




「みなさん、さっそく始めますよ。“ピアノ協奏曲第1番”の楽譜を準備してください。」




滝川先生が手を叩いたことで、その場の空気がガラリと切り替わった。



さすがに好き放題していた人達も、状況の変化に気付いたらしい。



みんなが小春ちゃんに集中して視線を向けた。



在校生の人達は、先生に指示された曲の楽譜を準備していた。



小春ちゃんはすでに座っているから、準備は万端みたい。



気持ちを落ち着かせるように、瞼を閉じて深呼吸を繰り返していた。



その姿は凛としていて、なおかつ華やかにも見えて――。


まるでその姿は、プロのピアニストと思えるものだった。




指揮台に登った滝川先生がピアノの方に体を向けた。




「始めても大丈夫かしら?」



「…はい。大丈夫です。」




小春ちゃんの声は、緊張で震えてなどいなかった。



むしろ、はっきりしていた。





< 369 / 546 >

この作品をシェア

pagetop