光を背負う、僕ら。―第１楽章―
「今日の演奏を聞いて、あなたにもお母さんと同じような才能があると感じました。来年、ぜひあなたとこの学園で再会してみたいわ。」




滝川先生の言葉は、若き天才の未来を期待しているようにも聞こえてた。




「あたしも、そうなることを楽しみにしています。」




小春ちゃんの瞳が、一瞬にして変わった。



さっきまでは悲しみが前面に出てきているような感じだった。



だけど今はそれよりも、何かを企んでいる雰囲気の方が強い。



滝川先生と真直ぐ向き合って目線を合わせる小春ちゃんは、そんな瞳でじっと滝川先生の瞳を覗き込んだ。



滝川先生も、同じように小春ちゃんの瞳を見つめる。



その一瞬の間に、二人は目と目で会話をしていたような気がする。




「戸沢さん、本当にいい演奏をありがとう。さぁ、席に戻ってもいいよ。」



「はい。」




二人が数秒ほど見つめ合った後に、小春ちゃんは元いた場所へと戻ることになった。



小春ちゃんが人だかりの中から抜けようとすると、小春ちゃんを囲んでいた人達がサッと道を開けた。



まるで、自分よりもはるかに偉い人が通る道を作っているみたいだ。





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