光を背負う、僕ら。―第１楽章―
今の状況は滝川先生が最初に同じような質問を投げ掛けてきた時と、まったくと言っていいほど同じだった。



ただ違うのは、小春ちゃんのように自ら演奏をしてくれる人がいないということ。



さっきだって、小春ちゃんが自ら志願するまで誰も演奏をやろうとしなかったのだ。



小春ちゃんが演奏をしてしまった今は、きっと誰も志願する人などいない。



そのことを誰もがわかっているらしく、さっきよりも苦しい沈黙が流れていた。





「…ねぇ、佐奈。」




うつむくあたしの左隣りに座っている明日美が小声であたしを呼ぶ。




「…どうしたの？」




喋っていることを滝川先生や周りに立っている東條学園の先生に気付かれないように、あたしも声のトーンを落として明日美に返事をする。



小声でもよく聞こえるようにと、明日美と少し距離を縮めた。



明日美はあたしの耳元に口を寄せて、ボソリと言う。




「…佐奈は、演奏しないの？」




消えてしまいそうなほど、明日美が呟いた声は小さくて掠れていた。



だけどあたしにはその声が、はっきりと聞こえた。



脳に直接響いて伝わってくるような感じだった。




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