光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「だからあたしには、この場で演奏なんて出来ないよ。」



「………。」




明日美は何かを言いたいように口を一瞬開いたけれど、すぐに閉じてしまった。



そして結局何も言わないまま、黙ってあたしを見つめる。



あたしを見つめる丸い瞳が、あたしが心に秘めていることを覗こうとしているように思えた。



だからあたしはそんな明日美の視線が耐えられなくて、スッと目を逸らす。




――まだ、ダメなの。



ごめんね、明日美。



今はまだ、あたしの心を覗かないで。



あたしが今、どんな思いでいるのか。


それを誰にも、知られたくないんだ。



誰かにあたしのこの複雑な運命を伝えても、きっと誰にも変えられない。



だからこそあたしの複雑な気持ちまで、知られたくない。



自分でこの運命を変えてみせた時、初めて明日美や流歌に言いたいんだ。


あたしが抱え込んでいるすべてを。



胸を張ってすべてを話せるその日まで、あたしの秘密は話したくないんだ……。





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