光を背負う、僕ら。―第1楽章―
あたしは窓を順調に閉めていった。
だけど最後の窓を閉める途中、ついつい手が止まってしまった。
もちろんそれは、ここから見えた伸一君に目を奪われたから。
早く窓を閉めなくちゃって思って、窓を閉める間は運動場の方に目を向けなかった。
だけど、いつの間にか目は運動場の方を向いていて、ついつい伸一君の姿を追ってしまう。
急いでる。
急いでるのは分かってる。
だけど、少しでも長く伸一君の姿を見ていたくて、手は自然とスピードを緩めていた。
あたしは気付かなかったけど、後輩達はいきなり窓を閉めるスピードが遅くなったあたしの姿を、不思議そうに見ていた。
そんな中、あたしは相変わらず伸一君を見続ける。
その時、走っていた伸一君がゆっくりとスピードを落としていった。
伸一君は、疲れた様子で肩を上下に動かしていた。
だけど、何を思ったのだろうか。
ユニホームの袖の部分で汗を拭っていた伸一君が、ふとこっちに視線を向けた。
えっ…。
驚くのも束の間。
伸一君を見ていたあたしの視線と、ふとこっちを見た伸一君の視線の先が見事に重なり合った。